滋賀県病院協会報より


よい研修とよい医療の交点−1年を振り返って−
          済生会滋賀県病院 診療部長 臨床研修副プログラム責任者
           びわこ臨床研修ネットワーク事務局          中村隆志 



 「研修医にとって、よい研修とは、なんでも経験させることだ」という院長の号令で臨床研修に突入した。医療の質を維持するためにも、彼らの望みを叶えることは大切だ。しかし自分が患者なら、よい医療を受けたいと思って来院して、練習台にされては納得できない。よい研修とよい医療との交点はどこに存在するか? 研修医と過ごしながら考え実行してきた。

1.医療の標準化と安全管理
 
ある指導医に習った通りの手技を別の科でやったら叱られたことを、N君は疑問に感じていた。指導医は「オレ流」で教えている場合があり、標準的な手順を踏んでいないこともある。例えば中心静脈カテーテル挿入での死亡事故は、研修医が起こすわけではない。より安全な方法があることに気づいた指導医は、全員にフィードバックしてほしいと思う。基本手技の手順を安全面から見直し標準化する作業に着手した。

2.全人的医療のロールモデル

 全人的医療の実践は新臨床研修制度の大目標にあげられている。そのロールモデルが増えるほど病院は患者に信頼されるし、モデルなしにこの教育はできない。よい研修とよい医療の交点に立つのは、よい指導医=ロールモデルである。新しい医療面接を勉強するとよい。来院の本当の目的を知り、一旦は患者のわがままを受け入れる。ニーズを聴き出して、医学・医療との交点を探す。訓練の場として総合内科の外来診療を研修に取り入れた。その面接技法をびわこ臨床研修ネットワークhttp://www.biwa-ct.net)に連載中である。

3.医師の社会的スキル(再)訓練
 
当院での研修医のストレス調査では一方的に叱責するような指導が大きなストレスになっていた。聴き方や話し方がまずく、コメディカルにも同じ様な態度で接し、自分勝手と批判され、チーム医療の障害となる反面教師の仕業だ。他職種とも協調し、社会とも連携するスキルが求められている。研修医にはチームマネジメントやコミュニケーションスキルを実践の場で覚えてもらいたい。一方、教育活動を通じてコミュニケーションの重要性を認識し、反面教師が変わるチャンスになってほしい。

4.情報共有とチーム医療の推進
 
手前味噌だが、私の科では毎朝病棟に集合しmeetingを始めた。米国式の真似ではない。院内の他職種は以前からやっている。時間外入院患者の紹介と重症患者の把握、前日のカテーテル治療の反省、その日の予定の確認とともに、当番責任者が研修医からの報告と相談を受けてカルテにサインをする。チーム医療のqualityを上げ、患者の利益に還元する。研修指定病院の診療加算はこのような体制を想定してのものだろう。
 指導体制の確立は病院改革との共通点が多い。そこに力を注ぐことが成功の鍵だろう。課題山積であるが、新臨床研修制度のメリット/デメリットを整理し、メリットを最大限に活かしてゆきたい。


(写真)毎朝の病棟でのミーティング(循環器内科)




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