医療面接やセルフケア指導にも副作用がある
指示に従えない患者さんに対して、いきなり指導的な言葉や諭すような言葉は使いません。家族からよく「先生からも厳しく言ってください」とよく言われますが、これは逆効果です。服薬や禁煙、運動、食事療法などは自分で納得しない限り、行動を強制することはまず不可能と考えてください。指示を実行可能かどうかは患者さん自身が考えることです。
よくない指導を類型化してみました。
@ 脅迫型:「あなたはね!」と叱る
A 根暗型:悪い情報ばかりを強調し、リスクのみを機械的に伝える
B 管理型:「あれもこれもだめです」と禁止する
C 冷淡放置型:(自分で勉強して)「やせなさい」と突き放す
D 自己満足型:最新の医学情報を並べ立てる
E 恩着せ型:「あなたのためを思っていっているのです」
F 責任押し付け型:「だから言ったじゃないですか、悪くなるのはあたりまえでしょう」
これらの言葉には強制的な同意、押しつけや見下す感情が感じ取れますので、素直に受け入れることができないばかりか、反論が浮かんだり殻を閉ざすことになりかねません。主導権を奪おうとすると、薬を飲んでなくても飲んでいると嘘をついたり、来院を中断したり、ということになりかねません。医療面接や生活指導には重い副作用があるといってよいでしょう(表)。
表. 医療面接、セルフケア指導の副作用
主導権を奪われたり、要求が高すぎて挫折すると・・・
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1) 早々に脱落する 何年か後に、手遅れになって入院!
2) 力には力で対抗、反論が反論を呼ぶ
ストレスを感じ、心を閉ざす⇒ 逆効果
3) 患者が悪いと納得させようとして、自尊心を傷つける
トラウマを残す⇒ 受診のストレス
4) 自己修正能力(セルフケア能力)が低下
5) セルフケアにともなうストレス、自信喪失、防衛反応
(否認・合理化・心気症状)
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治療に入る前に準備状態をさぐる
患者さんが指示を実行できない時は、相手の立場から話を展開し、感情をモニタリングし、共感してから、自分で考えて決断するように促します。
「薬を毎日飲んで、定期検査を受けなければいけないことをどう思いますか?」(準備状態の評価)
「始めの内は薬を忘れずに飲むのが難しい方がよくおられます」(受容)。
「忙しい時や外出時に、薬を飲むのは大変ですよね」(共感)
「忘れずに飲めたのはどのような時ですか」(成功体験の想起)
「他の方はこのようにされていますが、○○さんはどう思いますか」(具体的提案)
不安定狭心症を発病した48歳の女性のケースを紹介します。はじめての検査入院の折に冠動脈形成術を受け、高脂血症、高血圧、糖尿病が一度にみつかり、数種類の内服薬が開始され、禁煙・食事指導が短期間に行われました。退院前に薬の袋を渡そうとしたところ「もう聞きたくない、薬ものみたくない」と看護師にもらしました。あなたが主治医ならどうしますか?
入院前にそれほど深刻な状態だとは考えておらず、自分は健康だと思っていたなら、矢継ぎ早に異常を指摘されては現状を受け入れる準備ができないことがあります。そんな状況では指導が難しいと思われます。初回の入院のように疾病受容の段階が進んでいないことが予想される状況では、患者さん自身が現状をどう解釈しているか、どう感じているかを尋ねることから始めます。当然、半信半疑かもしれないし、不安、失望などの陰性感情が予想されます。ショックが強いと防衛反応として現状を否定することもありえます。今までの生活を変えようかどうしようかという葛藤も生まれます。そのような感情を言葉に表してもらって、それを受けて共感の公式を使ってみます。
「いきなり病気だといわれて、ご自分ではどうしていいかわからないというお気持ちですね、本当にショックだと思います」
陰性感情を言葉に表し、共感を得られたことで、前向きな気持ちが芽生えることがあります。これからの生活をどう変えてゆくかといった指導は、建設的な気持ちがなければ、とても受け入れられません。取り組む気持ちになって初めて準備完了です。
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