患者さんの心をつかむ、聴きかた、話しかた 


第7話 共感の公式を生かすには
                ーまず、こころの中の心配、暮らしの中での障害を知るー


からだの症状に伴う感情を優先的にとりあげよう

 症状が起こったときに感じる不安や恐怖の感情を吐露させて話題として優先的に取り上げます。多くの身体症状は不安を伴い、動悸、胸痛、呼吸困難、めまいなどは時に恐怖感を伴います。安心させようとして「めまいで死ぬことはありませんよ」とだけ言われてもすぐに信頼できるわけでも恐怖感が消えるわけでもないもで、まず「死ぬかと思ったんですね(反映)、それは怖かったでしょう(妥当化)」と返しておきます。すぐに身体症状の問診に入るよりも、先にそのときの感情をひとこと取り上げるだけで信頼関係を築きやすくなります。

慢性の症状が、暮らしをどう変えたのか

 慢性の症状では暮らしの中でどう困るのかをはっきりさせた上で、そのレベそのレベルに対する共感を添えることで患者―医師関係を構築してゆきます。レベル分けの実例を下の表1に示しますが、いうまでもなく医学的重症度とは別次元です。返答例として「・・・の症状ために・・・ができないことをつらいと感じておられるのですね」と確認する。すなわち共感はそのプロセスとタイミングが重要である。“暮らしの中での症状”と“主観的な辛さ”を捉えて共感する必要があるでしょう。

 傾聴し共感を示すためのプロセスをわかりやすく示すと、まずどんな生活をしているのかに関心を示し、情緒を含めて語ってもらいます。「そのときどう感じましたか」と聴くだけでよいと思います。

 聴き方、尋ね方のスキル、傾聴と共感の公式を表に示す(表2)。症状のある時の暮らしぶりを目に浮かぶように語ってもらえなければ、それに対して出る共感の言葉は単なるマニュアルであり、敏感な受診者は容易にその雰囲気を察知し、「私の症状をわかってくれているのだろうか」と思ってしまうかもしれません。


表1 生活障害のレベル

1.不安・心配なし、家族や付き添い人の不安・心配あり

2.不安・心配あり、社会活動、日常生活の障害なし

3.社会活動、日常生活いずれかまたは両方の障害がある

a.日常生活に苦痛・支障はないが、社会活動には苦痛を感じながら参加している

b.日常生活に苦痛・支障を伴うが、社会活動に参加している

c.日常生活に苦痛・支障を伴い、社会活動に参加できない

4.基本的ADL(食事・排泄・移動・睡眠・入浴)が障害され介助が必要

5.基本的ADLがほぼできない

6.最低限の動作・会話・飲水ができない、呼吸がさまたげられる、死の恐怖など


表2 治療関係構築のための共感の公式

・受け手の言葉での置き換え(Reflection)と正当化(Validation)3)

「・・・が一番つらいとお考えですね、それは誰が見ても大変な状況でしょう。」

BATHE法4)

「どんな生活をしていますか?」    Background

「それをどう感じていますか?」     Affect

「最も難しい問題はなんですか?」   Trouble

「それにどう対処していますか?」   Handling

「それはたいへんな状況でしょうね」  Empathy



<参考文献>
Cole SA, Bird J:メデイカルインタビュー,三つの機能モデルによるアプローチ第2版(飯島克巳、佐々木将人訳);pp.18-23,メデイカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2003

Stuart MR, Joseph A, Lieberman JA:15分間の問診技法.日常診療に活かすサイコセラピー(玉田太郎監訳);pp129-130,医学書院 2001



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