患者さんの心をつかむ、聴きかた、話しかた 


第3話 受診に対するねぎらいを導入に使う 
                     -共感と敬意を伝え、すばやく信頼関係を作る-


 初対面の会話に伴うストレス・緊張をほぐす作業はアイスブレーキングと呼ばれ、十分な情報を引き出す環境を整えるのに最初に行います。一般には世間話や天候の話題などが会話の導入部分となるのですが、深刻な問題を抱えて来院した受診者には必ずしも適当ではないように感じます。そこでおすすめの方法が受診へのねぎらいです。診察室に辿り着くまでには人知れない苦痛・苦労や葛藤があります。ねぎらいの作業を通じて、そういうものも含めて話をちゃんと聞きますよ、落ち着いてなんでもお話しくださいというメッセージを送ることで、短時間の内に信頼関係を作る作業も兼ねることができます。

 なんらかの「ねぎらい」の素材はすべての患者さんに存在することに注意しましょう。ねぎらいのもっとも単純な公式は、受診に伴う実際の苦労をとりあげて「お疲れ様です」・「ご苦労様です」を付け加えます。「お疲れ様です」という言葉はあいさつとして職場で多用されますが、実際の苦労を知った上で使わなければ共感は伝わりません。


 ねぎらいのための代表的な素材をあげてみます。

 1)症状について: 体調が悪くてしんどいのに、病院まで足を運んで順番を待ったこと、
   無症状なら、なおさらわざわざ時間を割いて受診したことを話題にとりあげることが
   できます。検診項目の異常精査のために、先に検査を受けてから入室される方には、
   いきなり「今日はお疲れ様です」「ご苦労様でした」といっても不自然ではない状況です。


 2)仕事について: 働きながらの受診はいろいろな障害や苦労が伴います。仕事を休んで、
   あるいは休日を潰して来院したこと、夜勤明けで疲れているのに来院したことなどをとり
   あげます。そしてそれほど症状が辛いこと、不安なことを確認できれば受診の目的に対
   して共感の言葉をかけることができます。問診表には職業欄がありますが、さりげなく
   業務内容や社会的立場も確認して、仕事上の苦労と絡めて大変さをとりあげます。


 3)来院までの道程: カルテの表紙で住所確認しておき、遠方から来院された場合は通院
   手段と所要時間を尋ねることが、共感につながります。



 「ねぎらい」の素材を探る作業を通して、「全人的医療」の実践のために重要とされる、「心理・社会的側面」への配慮が自然にできるようになります。以前は単なる風邪ひきの患者さんにも、そこまでするかどうか違和感を覚えることがありましたが、同じ初診料を払っているのに病気に優劣をつけられることに反感を感じる受診者もいるのではないでしょうか。


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