話をまとめる作業として問題リストの作成について述べます。受診者が「この先生なら話を聞いてもらえる」と感じると、初診時には2〜4個の主訴や問題点があげられることがしばしばです。検診の結果説明でも多くは複数の異常を指摘されて来院されます。そこで医師は関連性のあるものと無いものに区別し、それぞれについて緊急性と重要性を日常生活の障害度、予想される予後、治療可能性に基づいて順番をつけます。このように作成した問題リストと患者の希望とをすり合わせ、どれから対応すべきかの合意を作り上げるのです。
医学的に重要度が同じような問題については、関心度を尋ねる質問をして比較的関心の低い問題点は緊急事態でない限り後回しにします。情報提供も、聞かれて関心を持ち出してから与えないと心に残らないからです(第8話参照)。
「この血糖値やいくつかの治療についてどう思いますか」
「喫煙と症状との関係についてどう思いますか」
「肥満の治療について詳しい情報が知りたいですか」
特に生活習慣病のように無症状の病態に対してセルフケアを指導して励ましてゆく場合には患者が主役であることを意識できるように質問します。
「計画はできましたか」(主体的参加の確認)
「では、これならできそうですか」(具体的目標の提案)
「思ったとおりいきましたか」「何割できましたか」(自己評価)
「どこが一番たいへんでしたか」(感情のモニタリング)
「他の患者さんの参考に、どうされたのか教えて下さい」(positiveな評価)
インフォームドコンセントの前に
詳しい説明をして、患者さんに選んでもらうこと、説明は患者さんにわかるように、と教わります。しかし、その説明は医療者側の立場からであり、学会・ガイドライン・EBMの立場で話してしまいます。つまり、医学の権威を持ち出すことで反論できないようにすることになります。救急の現場で、危険が差し迫っていて、患者さんには一時の我慢を強いるだけであれば、「最善を尽くすから、任せておきなさい」というのも、仕方ないでしょうが。
長期の治療方針には、継続性を頭に入れておかねばなりません。継続できるかどうかは患者側の心の条件が整っている必要があります。
これまでお話してきたように主導権を奪わないこと、患者さんの希望・信念・生活を聴くこと、というプロセスを抜きにして、患者さん主体の決定は不可能のように思えます。治療の継続性(アドヒアランス)を高める4つの外的因子とそれを満たす方策をあげておきます。
@治療法が患者自身の価値観・信念・期待に沿っているか?
希望を引き出すこと、長期的には変わりうるのでチャンスを伺うことも必要。
「その治療はあなたの希望や価値観にあっていますか?」
Aその治療法、用いる理由を患者がよく理解しているか?
理解できる言葉で、十分な情報提供。
「いろいろな治療の効果、危険性、負担について、十分な知識を得ましたか?」
B選択,決定過程に患者が積極的に関与しているか?
主導権を患者に渡すこと、能力を引き出すこと。
「その治療はあなた自身が考えて決めたものですか?」
C患者にとって重要な人物が、アドヒアランスをモニターしてくれるか?
医療者自らが重要人物になるか、key personの協力を得る。
「その治療を受けるに当たって、ご家族はサポートしてくれますか?」
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